日本造園学会が発行する学術雑誌『ランドスケープ研究』に、能登SDGsラボに関する以下の論文が掲載されました。

 

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北村健二・宇都宮大輔・上野裕介. (2021). 「里山里海を未来につなぐための地域づくり―能登SDGsラボの挑戦―」. ランドスケープ研究, 85(2): 112-115.

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同誌の編集委員会が第85巻2号において企画した「循環・共生による地域の自立」と題する特集のなかの一編という位置づけです。

能登SDGsラボ運営委員で、同学会の会員でもある石川県立大学准教授の上野裕介委員が、上記特集の趣旨と能登SDGsラボの取り組みの間には親和性が高いと考えたことがきっかけです。

上野委員は、編集委員会と著者陣の間の調整に加え、自身も著者の一人として執筆に従事しました。

主著者（北村）の構成案や原稿に対して上野委員が数段階にわたり修正やコメント提供し、論旨が徐々に定まっていきました。

また、宇都宮大輔コーディネーターは主として自然環境の面からの奥能登地域の特徴や取り組みを中心に原稿執筆に参加しました。

 

ランドスケープとは様々な意味をもつ概念です。

本稿では、自然的景観だけでなく、人の営み（すなわち社会的・経済的な面）も含む概念としてランドスケープをまず解釈しました。

そして、「見渡す（認識する）ことのできる範囲」という視点を設定して、能登SDGsラボの取り組みを論じる試みをおこないました。

 

里山里海の保全・利用や人材育成を柱に約15年間にわたり続いてきた奥能登における一連の事業が、能登SDGsラボの活動につながる基盤になっています。

こうしたこれまでの事業は、参加する人が学びを深め、里山里海や地域のあるべき姿を自分ごと化することを促してきました。

同時に、新たな視点やつながりが生まれることにより、個人にとっても地域にとっても「見渡すことのできる範囲」が強く広くなる効果があったと解釈できます。

 

こうした地道な基盤づくりを経て、2018年に珠洲市がSDGs未来都市に選定され、能登SDGsラボが開設されました。

SDGsにより、従来よりも多くの主体が関わることとなり、それらの主体間の協働が新たな活動を生み出し始めています。

過疎高齢化が進む地方都市で、このような動きは未来への希望の光です。

一方で、多様な主体が関わることは、「見えない範囲」が増えることも意味します。

見えない動きを可能な限り「見渡すことのできる範囲」に含めていくように地域側が意識していくことが、今後ますます大切になっていくことでしょう。

以上のような論考を本稿で展開しました。

 

さて、能登SDGsラボは、その名のとおり研究をおこなう場です。

その研究とは、地域課題解決に資する協働によって実施されます。

こうしたラボの取り組み自体も研究テーマとして重要です。

本稿はその一例で、いずれもラボの研究者である著者3名が研究的視点で取り組みを論じたものです。

本稿で試みた考察が、外から能登を見る人たちに対して多少なりとも参考になることを願っています。

同時に、能登に暮らす人々が地域の未来を共に考えるきっかけになれば幸いです。

 

北村健二（コーディネーター）

 

能登SDGsフィールドレポート：日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体で、組織の立場や見解を示すものではありません。