【能登SDGsフィールドレポート 第2号】20年目の春まつり

2019年4月28日(日)10時から金沢大学能登学舎グラウンドにおいて「小泊校下地域振興会 春まつり」が開催された。前年まで「桜まつり」と呼ばれていたこの行事は、今回で第20回という節目を迎えた。何ごとも20年続けるのは大変なことで、主催する振興会はじめ関係者の尽力に心から敬意を表したい。

前日までの雨によりグラウンドはぬかるみ状態だったが、中道さん親子を中心とする関係者の献身的な作業により水たまりはほぼ解消。そして当日は快晴。雨続きの週刊予報のなか、この日だけ太陽が顔を出した幸運に感謝。小泊校下地域を構成する雲津、伏見、高波、小泊の4地区や常連さんたちの手慣れた出店ぶりに20年の開催経験の蓄積を感じる。

能登学舎で常々お世話になっている里山里海食堂「へんざいもん」も長年の出店経験から抜群の安定感。今年は同日別会場の行事での弁当販売と掛け持ちで例年以上の重労働。しかし、的確な数量設定によりすべての品目を完売。料理も段取りも「お見事!」の一言である。

ステージプログラムも多彩で楽しい。みさき保育所園児が元気に歌って踊れば、民舞明千代会や珠洲翔扇会は熟練の演舞、そして勇壮な雲津白山太鼓。それらの間にクイズやくじ引き抽選。昨年から小泊小学校校歌合唱も加わった。地域の人たちの心がこうしてひとつになる。

(写真提供:珠洲市役所)

我々金沢大学能登学舎のチームも、昨年、主催者からお誘いいただき(2018年2月掲載の「能登学舎ブログ」記事参照)、前回から出店させていただいた。今回も引き続きお声掛けいただき、「金沢大学能登学舎のなかまたち」という看板のもと、以下の4団体の連名で参加させていただくことになった。

・能登里山里海マイスターネットワーク
・能登里山里海SDGsマイスタープログラム
・能登里山里海SDGs研究部門
・能登SDGsラボ

昨年と異なるのは、「なかまたち」に新たに2つの組織が加わったことである。ひとつは、「能登里山里海マイスターネットワーク」。能登学舎で2007年から実施されている地域づくり人材の学びの機会であるマイスタープログラムを修了した人たちの集まりで、100名を超える多彩なマイスターが会員となっている。昨年もマイスターの有志が出店してくれたが、今回は、法人化に向けて組織として活動を強化している同ネットワークの役員や有志が前面に出て出店してくれた。

もうひとつは、「能登SDGsラボ」である。珠洲市が国からSDGs未来都市に選定されたのを受けて2018年10月に能登学舎に開設された。「なかまたち」のなかで最も新しい構成員である。国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs、エスディージーズ)」を奥能登から目指すために一歩ずつだが取り組みを進めている。春まつり当日は、ラボ事務局員の高 真由美さんが会場内でお茶を振る舞って回り、まずは最初のご挨拶。これから色々な形で小泊はじめ珠洲のみなさんとご一緒させていただく機会があるだろう。SDGs自体が馴染みにくいものかもしれないが(2018年9月掲載の「能登学舎ブログ」記事参照)、とにかくよろしくお願いいたします。

(写真提供:瀬川しのぶさん)

我々新参者は春まつりへの参加のしかたをまだ少しずつ学んでいる段階だ。出店ブースでは「なかまたち」の各団体を紹介するポスター展示。能登里山里海マイスターネットワークとしては、本件担当役員の瀬川しのぶさん(2018年修了)の指揮のもと、副会長の今井誠さん(2018年修了)、役員の高 真由美さん(2019年修了)が企画運営の役を担った。マイスターによる出店としては、浅井英輝さん(2018年修了)の「いか天ぷらうどん」(和平商店)と、岩﨑京子さん(2019年修了)の「SDGs×加賀ゆびぬき」(itohana)の販売があり、地元の人や来場者に足を止めていただいた。ステージでも時間をいただき、我々が何者なのか簡単に紹介させていただいた。ほかにもマイスターや関係者の顔が会場にあった。また、会場に設定された軽トラックで移動可能なタイニーハウスは家族連れに大人気だった。これも、大野隆志さん(2013年修了)というマイスターの展示である。

前回、いまいち馴染み切れなかった反省を踏まえ、今回は主催者や地元出店者とマイスターの交流の機会を増やすこととした。具体的に僕が提案して実現したこととして、マイスターが各店を取材し、見どころを手描きで表現した会場見取り図がある。高さんと瀬川さんの合作で完成した見取り図。さりげなく、しかし確実に交流が進むための仕掛けのつもりだったのだが、効果やいかに?

前回も参加し、今回はマイスターネットワーク役員として企画運営を担当した瀬川しのぶさんは語る。「準備から打ち上げまで地元の人たちとご一緒できたので、お互いの距離が縮まった気がします。マイスターネットワークとしてこれからコラボできることもありそうです。」

主催者である小泊校下地域振興会の新谷泉さんからは以下の言葉が届いた。

「20回目の(春)まつりを開催することができ、出演、出店、そして、参加、協力していただいた方々に感謝いたします。
旧小泊小学校校下4地区を中心とした小さな行事ですが、全員で楽しむことを一番の目標にしています。
予算や人数の関係で、ほとんどが手作りのまつりですが、各地区の青年部や地域の方々、三崎公民館、金大能登学舎のみなさん、そして、沢山の方々に支えてもらい、今年も開催することができました。
最初に(桜)まつりを、計画、実行してきた、先輩方、スタッフの皆様、何も無い所からのスタートで、ここまで歩きやすい道を造っていただき、改めて感謝申し上げます。
これからも、30回、40回、目指して頑張ります。応援・協力、よろしくお願い致します。」

(似顔絵制作:橋元紳一郎さん(春まつり出店者、珠洲市野々江町))

能登学舎のなかまたちにとって、小泊校下地域の人たちは最も身近なご近所さんたちである。しかし、日常的な接触は残念ながら少なく、「近くて遠い存在」の感が否めなかった。本当に近い存在になるための一歩として、この行事は貴重である。

能登SDGsラボの目的のひとつは「マッチング」である。今回、主催者が片づけ後におこなう懇親会にマイスターたちも参加して交流を深めた。ささやかな縁結びの機会を作れたのではないかと感じている。また、春まつりには遠くは関東からの来客もいらっしゃった。SDGsターゲット11.aにあるとおり、つながりを作ることは大切で、これからもこのような縁結びをひとつひとつおこなっていきたい。

ターゲット11.a(抜粋):経済、社会、環境面における都市部、都市周辺および農村部間の良好なつながりを支援する。

 

後日談 春まつり当日に取材に来てくれた北國新聞。翌日の誌面にこの行事の記事が見当たらず少しがっかりしていたところ、6日後の5月4日付けの朝刊に記事を発見! この時期、世間は10連休。能登でも行事が多数あるなかで、短いながらも記事を掲載してもらえるのは地元密着型の媒体ならではのこと。ありがたい。

北村健二(社会分野コーディネーター)

 

参考情報:

・本稿の概要版は「広報すず」2019年7月号「金沢大学能登学舎の窓から」に掲載。

・広報すず https://www.city.suzu.lg.jp/soumu/kouhou_suzu_PDF_koukai.html

・能登学舎ブログ https://www.crc.kanazawa-u.ac.jp/meister/category/gakusha-blog/

 

能登SDGsフィールドレポートは、日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体です(組織の立場や見解を示すものではありません)。